2004年 12月 28日 ( 2 )

『さまよう刃』東野圭吾

ついでに『さまよう刃』東野圭吾
妻の死後宝物の一人娘を底抜け未成年動物男たちにレイプされ殺害された父が、仇討ちしようとする話。
完全に現実の違和感が再現される。こんなことあったよな、、、ぐらい普通な展開。
でも、現実が現行法のジレンマを乗り切れないように、やっぱり同じようにやり切れなさが残る結末。
読後感の悪さが、さらにリアル。
リアルな展開って確かに問題意識を提示するけど、少年法関連について、現状との乖離とか、そう言うのを盛り込めばええのに、とつい、思ってしまう欲張りな読者でした。
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by yyymotot | 2004-12-28 22:50 | Books

『航路』 コニー・ウィルス

『航路』 コニー・ウィルス
う〜〜、、久々に<読んだよ〜>っていう感じ。
簡単に言えば、「臨死体験SFもの」。
臨死体験を科学的に解き明かそうとする主人公ジョアンナが、実際に疑似臨死実験を通してその秘密に最後辿り着く、、っていう話。この本に出てくる疑似臨死体験誘発剤「デジテミン」は著者の創作なのでジョアンナが辿り着いた結論だって実は一つの可能性にすぎないんだけど。

ニアデス体験者が語る天国やら極楽やらの話は、無宗教者(多宗教者)の多い日本人ならすぐそれが何かのメタファだとわかるんだけど、流石ブッシュを再選させた宗教国アメリカ。ニアデス者の天国的なイメージですっかり舞い上がっちゃうらしい。神の国はあるようだ、、、とか、そういう話にもってけば大受け。この本は、そういう現実の状況にトンデモ嫌いな著者が、全く別の解釈を提供する話。そう、別の解釈、、、。でも、実は、彼女の解釈はそんなに救いのあるものではない。救いはないけど感動する。
救いとか癒しとか、そう言うものと感動が全然別ってことがよくわかる。


日本ではニアデスもので有名なのは立花隆の『臨死体験』だろうか。多分読んだと思うけどすっかり忘れてる。
いずれにしても、肉体的に異常事態が起き苦痛を引き起こす時、脳がそれを緩和するためにエンドルフィンやそれに近いものを分泌して死の肉体的苦痛から逃避させるんだろうな、、、ぐらいは考えてた。
でも、コニー・ウィルスが描き出した結論は、、、、。

以下ネタバレ
 今回『航路』で物凄くショックなのは、脳死ビジョンとはあるメタファ〜にすぎないというくだり。
人間の考え、創造物なぞ、すべからく脳のメタファーにすぎない、といった養老タケシの言葉を思い出した。

『航路』は、ニアデスのビジョンは死に対抗しようとする脳のSOS活動だったっていうオチ。襲いかかる「死」に脳はSOS信号を打ち続けあらゆるシナプス連結を行い、死を回避しようとする。あらゆるビジョンは、その最後のあがきだって言う訳です。ニアデスで語られる故人との出会いも、天国のような光景も光もすべて、理解不能の「死」というものに対して、なんとか整合性をつけよう、終わりを回避しようとする脳の最後のあがきだという解釈。

私たちがその死を倫理的に社会的に解釈し納得したところで、死に際した脳は、かつて一度だけつながった経路までを探し出して
「SOS]を発信しようと躍起になり様々なビジョンを見せ、なんとか死を免れようとあっちこっちに信号をやみくもに送る、かつて一度でもつながったことのあるシナプスを必死で探しだし「SOS」を送り続けるようとする、、、。
なぜなら「死」という概念は脳の機能それ自体には決して理解できないできごとだから、、、。
なんと切ない話でしょう。
脳!がんばるからね。って呼びかけたくなる。生命っていうのやっぱり凄い感動的なものなんだなあ。



だれも死者が語るようには「死」を説明する事は出来ない。
疑似臨死体験誘発剤がたとえ出来たとしても、それは、本当の死とは多分ちがう。でも、それがあった時、どんな風に人間はどんな風に死を理解し直すだろう。それによってどんな風に自分の生を価値づけることができるだろう。そんな if に挑戦したコニー・ウィルス。
極私的な自分を超え、様々に死んでいった、あるいは死につつある、あるいは、死んでいく多種多様な「私」という集合体に対する壮大なレクイエムを聞き続けている感覚が読後2日経ってもまだ残っている。
絶対おすすめ。
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by yyymotot | 2004-12-28 22:35 | Books